NPO法人ペットライフネット設立記念セミナー
高齢者がペットと共に暮らせる社会をめざして(3)

講演【3】 「ペットのために資産を遺す~ペットライフ信託とは」

      澁谷 誠太郎氏(サーバントラスト信託株式会社 代表取締役)

澁谷社長
先ほど弁護士の檜山先生から「ペットに相続権はありません」とお話をいただきましたが、とはいえ、ペットが大切な方からすると自分が亡くなった後、ペットを誰かにお願いして育ててもらうのは可能かもしれませんが、より確実に里親さんもしくは親戚に負担をかけずにペットを飼ってもらえたらそれに越したことはないと思います。

そうするならば財産をペット用に残してあげるのが一番かと思います。フード代、病院にかかるお金、トリミングにかかるお金をいかに残すかということは、遺言書では無理です。例えば犬に財産を残しますと遺言書を書いても無効になります。「親戚の誰さんに財産300万円を渡します。ただし、このお金はペットの飼育だけに使ってください」というのは実現できないです。実現しようとするなら、今からお話しします信託という仕組み使うしかほぼ術はないかなと思います。

「投資信託」とは違う、財産を守る「管理信託」サービス

日本国民ほぼ99.9%の人が信託という言葉を聞くと「投資信託」を想像されますが、それではありません。実は平成19年に大正時代に定められた信託の法律がようやく変わりまして、いろんな使い方ができるようになりました。それまでは利益を生み出すような投資信託というようなものが信託サービスの大半でしたが、信託の法律が大きく変わりまして、ようやく色々な仕組みがつくれるようになりました。また、信託と聞くと信託銀行なら知っているという方が大勢いらっしゃると思いますが、平成16年の信託業法改正により、信託銀行だけではなく、新たなサービスをつくりだす信託会社が誕生しました。信託会社は今日現在、全国に16社しか存在しておりません。

私も若いながら代表をやることになりましたが、人の要件、お金の要件、資本金など様々な厳しいハードルがあります。私共、信託会社を管理しているのは金融庁です。銀行、証券、保険などと同じジャンルに位置付けられています。

ということで、今日お話しする仕組みは、日本で私共しかやっておりません。ニーズがあるかないかを探らなければいけないということを大手の銀行さんは時間をかけてやりますが、私共はニーズがあると思ったので、この度NPO法人のペットライフネットさんと協力しまして、こういう仕組みをつくりました。元々、私共の法律の顧問をやっていただいていたのが、先ほどの檜山弁護士の事務所でしたので、ご紹介いただきまして今日の仕組みを作り上げた次第です。

私も相当な愛犬家でして、現在、トイプードルを飼っております。家を出てくる前に蝶ネクタイをつけて、皆さんに見せるからということで妻に写真を撮らせました。生まれてこの方、ずっとペットがいなかった時期がないくらい実家でも犬を飼っていましたので、今日の仕組みは仮に私が高齢であるならば絶対にいるだろうと思っておりますし、私自身、全国を飛び回っていますのでどこで事故にあうかわからないと妻に話をしたら、「残せるものなら残してみたいね」と言っておりました。私も一愛犬家としてもお話しさせてもらいたいと思っております。

一般個人の方でご高齢もしくは単身の特に女性が多いですが、ペットを飼っておられてお金を残せないのかなと思われている方が非常に増えてきています。一般個人の方じゃなくても、司法書士さんや行政書士さんのような相談を受ける方からも、こういう仕組みが欲しいとよく言われています。また犬や猫を飼っているから老人ホームに入居できない方もたくさんいらっしゃいます。ペットと同居できる老人ホームがなかなかないようです。ペットを飼っている立場からすると子供のようにかわいがっていますが、ペットを嫌いな方もいます。できればペットを誰かに預けた状態で老人ホームに入れたらと老人ホーム側からも相談が増えてきています。ペット霊園というのもたくさんでき始めていますし、私共が提携させてもらっている霊園にもペットのお墓があります。小さいタイルにペットの写真を焼き付けて永代供養の形にされています。今日お話しする仕組みの最終いきつく先はペットのお葬式になると思います。そういったお金を預かるというところもご説明させていただきます。

お手元の資料を見ていただきながらお話しさせていただきます。

1.ペットライフ信託って何?

飼い主に「もしものこと」が起きた場合とは、まずはお亡くなりになった時。次に、成年後見がスタートした時で、要は弁護士の先生などが財産の管理や法律上の契約行為の代理をする仕組みとして後見というものがあります。認知症になってから後見の申し立てを裁判所にする時というのもありますが、最近増えているのは元気なうちにこの先生に面倒をみてもらいたいとあらかじめ決めておいて、契約を結んでおくという任意後見もあります。認知症などで判断能力がなくなった時に裁判所に後見をお願いに行き、裁判所が後見開始決定を下した場合も、「もしものこと」に含まれます。あとは長期入院、ご自宅に戻ってくるめどが立たないくらい長期にわたる入院になってしまったときも、この「もしものこと」に含まれます。人それぞれの「もしものこと」があると思いますが、平たく言うとお亡くなりになるか、病気になるか、老人ホームに入るか、そういったところが1つの時期としてあげられます。「もしものこと」があったとしても、ペットが幸せに暮らせるように将来の飼育費用(飼育という言葉はあたりが強いかもしれませんが・・・)を信託という方法を使ってペットのために残してあげるという仕組みを今からご説明させていただきます。

先程も説明しましたが、投資信託ではありませんので、信託といっても運用は一切しません。預かったお金は絶対さわりません。預かったお金はりそな銀行か三井住友銀行で特殊な口座を開設していただき、そこにお金を置いておきます。「もしものこと」が起きた後、獣医さんにそこから健康診断料を払ったり、ペットフード代を業者に払ったり、里親さんに毎月の養育費を払っていくということが、スタートしていきます。それまでは一切お金は動きません。

私共、信託会社という内閣総理大臣から登録を受けた会社がお金をお預かりしますので、そこから払っていくということを資料にざっくり書いております。よくありがちなNPO法人さんで、犬を引き取って一律300万とか猫なら200万といってお金を預かっているところが世の中にはたくさんあります。ただ、お亡くなりになってから何をされているのかわかりません。それこそ処分されている可能性もゼロではありません。誰も確認ができないのです。そういうことをしてお金を稼いでいるNPO法人さんがあると聞いています。ただペットライフさんはいい理念を持たれていますので、お金には触れないのです。NPO法人さんが直接お金をさわるから胡散臭くなります。今回の仕組みは私共がお金を預かりますので、NPO法人さんは里親さんを探すネットワークづくりや獣医さんのネットワークを作る方に注力されます。なおかつ、お亡くなりになった後の送金の指示、この獣医さんに払ってください、里親さんの定期的な訪問をしてちゃんと養育しているかのチェックをしたりすることに尽力します。私共がずっとお金を預かり続けますのでお金を不正に使われることはあり得ない仕組みをつくりました。私共が作る信託契約書は20ページ以上になります。ここまですることで「絶対に守れる」ということが言える仕組みを作っております。少し今まで聞いたことがない難しい話だからこそ、ワンちゃん猫ちゃんの生活も守れるということを念頭に置いてお聞きいただけますと有難いです。

2.信託という仕組みについて

信託というのは、財産を管理する仕組みです。契約書で決めたルール以外ではお金は一切動きません。このお金は獣医さん、ペットフードショップさん、里親さんにしか払わないと決めれば、それ以外にはお金はいきません。別の業者に払うようNPO法人さんから指示があっても払わないルールとして、金融庁にもみせます。私共は検査を受けますので、契約書にない送金をした場合、私共は罰せられます。契約したルールが非常に大事になってまいります。

こういうことは言うべきではないかもしれませんが、私共も株式会社として事業をやっておりますので、君たちが倒産したらどうなるんだといわれることがあります。倒産しても全額保全されるというのが信託というルールです。預っているお金は当社の財産ではありませんので差し押さえられることはありません。

現時点で二百数十億円ほどの財産の管理をしています。リーマンショックの前は一千億円ほど預っておりましたが、その金額からしても今回のペットのお金は利用者が増えてくれば、何十億というお金になる可能性はあります。管理体制だけは整えておりますのでご安心いただきたいと思います。

先ほど信託会社は16社しかないと申し上げましたが、このうちの9社だけが管理信託会社です。管理しかしない会社で、残り7社は運用します。

3.ペットライフ信託の登場人物

資料には4人の登場人物(役割)を書いておりますが、実際の登場人物は3人です。飼い主、信託会社、NPO法人さんです。この三者間の中で契約を結んでまいりますので、この登場人物を知っておいてください。委託者=お金を信託会社に預ける人、飼い主さんになるわけですが、私共とお客さんで契約を結びますのでその時にNPO法人さんにフォローに入ってもらいます。

基本的には普段ワンちゃん猫ちゃんに使っているお金、何年分というのを計算したうえで預けていただきます。その時にNPO法人で獣医さんに診断をしてもらって、重大な病気はもってないかなどを確認したら、だいたいの余命が読めます。それに見合ったお金をまず預けましょうと。で、10年の寿命のワンちゃんだったとしたら仮に年間20万円かかると診断がでたとして、10年×20万円で200万円を預かります。預けたまま1年たったとしたら、ペットの余命は9年になりますので、20万円余計になりますね。ここで20万円お客さんに戻します。ペットよりお客さまが長生きした場合、200万円がそのまま戻ってきますので、預けてしまったらずっと預けっぱなしということはありません。必要な分だけを預けておくという仕組みです。

4.ペットライフ信託の全体イメージ

ペットを飼っているおばあちゃんと信託会社との間で「ペットライフ信託」の契約を結びます。お金は信託会社が預からせてもらいます。その際、信託の権利(図:赤い玉)と交換するんです。赤い玉とは何かというと、例えば今日契約して200万円預けたとして、来月になってお金を返してほしいとなると解約する権利もここに入っています。いつでも解約できます。先ほど言ったおばあちゃんが1年長生きしたときに20万円戻ってくるという受け取る権利もここに入っています。要は本人がお金を持っているのと全く変わらない状態だと思ってください。「生前は余剰分を毎年返還」するわけです。

次に、檜山先生のような弁護士さんに遺言書を作ってもらいます。遺言でペットに財産を残すことはできないので、誰に対して財産を渡すのかというと、NPO法人に対して財産を残します。NPO法人に引き継がれるように弁護士さんに遺言書を残すサポートをしてもらいます。ただここで問題は200万円というお金をNPO法人が直接持ってしまった場合、誰もチェックができないため不正が起きがちになります。NPO法人の通帳にお金が入るからそうなります。

一方、「ペットライフ信託」の仕組みではペットが死ぬまでNPO法人は1円もさわることができません。遺言書のほうで引き継ぐといったものは、信託という契約を引き継ぐということです。契約の中にルールをいっぱい決めておく、例えばこの獣医さん、このボランティア団体、霊園にお願いするなどをあらかじめ決めておきます。里親さんに対してお金を払うのも信託の中で全部決めておきますので、この契約書ごとNPO法人に相続してもらいます。実はNPO法人がこの契約を引き継いでからは、契約内容の変更はできないようになっています。先ほどいつでも解約できると言いましたが、それはこのおばあちゃんが生きて権利を持っていらっしゃる間だけで、その間の変更、解約はいくらでも応じます。

NPO法人が遺言書で引き継いだり、もしくは後見とか長期入院になって引き継ぐという話になったとき、NPO法人は一切契約変更をできなくなります。これが全体の仕組みです。

最後にご本人が亡くなった後、ペットも亡くなってお金が少し残っているとなればNPO法人が広報活動に使ったりしますが、このお金の使い道にも制限をかけますので、飼い主さんの思われたペットへの気持ちが、ペットが亡くなるまで未来永劫続きます。
仕組み201402132

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