残された方のためにも、公正証書で遺言を!

司法書士の木村貴裕です。ペットライフネットはペットを飼うまたは飼おうとする高齢者支援を目的としていますので、今回は高齢者ご本人に関する話を少ししたいと思います。

「終活」。今では「しゅうかつ」からきちんと変換されるほどの言葉になってきています。ごく簡単にいうと残される者のために生前にきちんと準備をし、ご本人が安心して余生を過ごすための行いという意味でしょうか。それらに関連して、書店や文房具売り場には、エンディングノートや遺言というタイトルもよく目にします。
終活の中でも重要なものとしてよく取り上げられるのが遺言をすること。私たちの業界では流行りと言って良いのかどうかわかりませんが、数年前から書籍の出版やセミナー講師などをされている方も多く、相続や遺言などに関する知識もかなり一般的になっていると思います。
ですので、これらの話をするのは正直今更という感じなのですが、まだまだ広く知れ渡っている知識とまではなっていないと感じることが最近もありましたので、あえて取り上げたいと思います。
取り立てて奇をてらった話は今回はしませんので、よくご存じの方には申し訳ありませんという内容です。

まず、遺言そのものについて少し。法的にどうこうという話ではありませんが、よく耳にするのが、「縁起でもない」という言葉です。「遺言書なんてものを作ったら早く亡くなる。」とか。
後者は根拠はありませんし、そもそも遺書と遺言がごっちゃになっているような印象を受けます。遺言は、先に述べたようにこれから安心して過ごすためにするものと言っても良いでしょう。

遺言をする方法はいくつかありますが、なんと言っても公正証書でするのが一番です。 この記事を書くにあたって「遺言をする」か「遺言書を作る」か、どちらで表現するほうが、読んでいる方に伝わりやすいのかで悩みました。なぜなら、遺言をするとは、法律上の形式にのっとってしなければならないからです。
例えばビデオレターのようもので意思表示をしたものを作りましたでは法的に遺言をしたとはいえません。思いを伝える手段としては有効かもしれませんが、遺言は形式が重要視されるものですので、その点では公正証書でするのが一番間違いがありません。思いを伝えることはできたとしても、形式に不備があればそれが実現できなくなります。

誰でも遺言はしておくのが良いのですが、とりわけ次のような方たちは重要になってきます。
一番は、ご夫婦の間に子どもがいらっしゃらない場合です。
この場合、一番多いケースでは、法定相続人に「残された配偶者」と「亡くなった配偶者のご兄弟」がなります。例えば、残さ親族の範囲れた配偶者が現在も住んでいる家を相続し登記名義を変更しようとしても、亡くなった配偶者のご兄弟と協議したり、その方たちから印鑑証明書や実印を押した書類をもらわなければなりません。
亡くなった配偶者のご兄弟が近くに住んでいて行き来もあり、気持ちよく協力してくれたなら良いのですが、遠方であったり、疎遠であったり、場合によっては行方がわからないなどであったならかなり面倒なことになります。
登記名義人である亡くなった配偶者が、その財産を残された配偶者に相続させるという遺言をしておいてくれたなら、こんなに苦労せず結構簡単な手続きとなったはずなのにのになぁと悔やまれるケースを、不動産登記の専門家である司法書士としては本当によく目にします。

そのほかにも、相続人ごとに特定の財産を相続するように指定したい、法定相続人でない人にも財産を分けたい、内縁の配偶者に財産を残したいなど、遺言をしておくべき場合が多々あります。
また、近年では信託(特に民事信託)などを活用して、より多様な形で次世代に財産を渡すということも考えられています。

これらの話はそれこそ書籍が一冊できるほどのボリュームがありますので尽きないのですが、今回はここまでにしたいと思います。
最後まで読んでいただき有り難うございます。参考になりましたでしょうか。この内容が少しでも考えるきっかけになれば幸いです。

(木村 貴裕)