7月28日(木)午後6時半から大阪市中央公会堂3階の小集会室で、獣医師・保護動物アドバイザー西山ゆう子さんを囲んで「多頭飼育とボランティア活動について考える勉強会」を開催しました。
事前申込は、定員90名のところキャンセル待ちがでるほどでしたが、当日の参加者は95名。東京、名古屋、広島、島根、愛媛と他府県からの参加者も多く、多頭飼育崩壊に関わるボランティア活動への関心の強さが実感できるイベントになりました。
勉強会の最初に西山ゆう子さんからの基調講演をいただきました。
内容は、
(1)米国における動物の法律と取り締まり
(2)多頭飼育崩壊
その定義と多頭飼育者のタイプ
(3)崩壊の予防対策
多頭飼育者のタイプ別対策、行政との連携、動物愛護団体の健全な運営
以上の3部にわたり、西山ゆう子さんのシャープな現状分析とハートフルな提言がなされました。この間、スタッフを入れて100人を超える会場は、西山ゆう子さんのひと声ひと声を聞き漏らさないでおきたいという必死さが伝わってくる緊張感あふれた静けさに包まれました。
続いてのパネルディスカッションでは、
ペットの弁護士・細川敦史さん
特定非営利活動法人C.O.Nの理事・増尾知恵さん、
大阪ねこの会副代表・荒井りかさんをパネラーに、
直近で起こった多頭飼育崩壊の事例をもとに関係者との連携(飼い主、地域自治会、府・県・市、警察、獣医師会、ボランティア)の重要性を話し合いました。
連携を促進する役割として、西山ゆう子さんからアメリカではソーシャルワーカーがいるという説明がありましたが、日本にはまだそのような体制は整っていません。この時、大阪市の社会福祉協議会の樋原裕二さんから、
今年から、港区、住之江区、鶴見区の3地区でモデル事業として「生活支援コーディネーター」を設置。高齢者問題を様々な団体と連携して解決しようという動きが始まったという貴重なお話をお聞きすることができました。
ボランティアの過剰負担を救う尼崎市における「動物愛護基金」と「ふるさと納税」、公益財団法人どうぶつ基金が応援する「やるで!大阪さくらねこプロジェクト2016」の紹介。
細川弁護士からは、多頭飼育者を生活環境を損なった場合に取り締まる「動物の愛護及び管理に関する法律」第二十五条、第四十七条(勧告、命令に従わない場合は20万円以下の罰金)。不適正飼養の視点から出された「大阪府胴動物愛護及び管理に関する条例」(犬・猫を10頭以上飼養する飼い主は届出が必要。届け出ない場合は5万円以下の過料)。また、「動物取扱業」にも規制が設けられ、10頭以上飼養する場合は「第二種動物取扱業」の届出が必要とされている旨、紹介していただきました。しかし、法律面で規制がされていても、広く認知されておらず取り締まり件数もほんのわずかというのが実情です。西山ゆう子さんいわく「アメリカならさしずめ White Eiephant(宝の持ち腐れ、無用の長物)といわれるのでは…」とズバリ。
その後の質疑応答では、保護犬・保護猫の譲渡基準についての質問などが相次ぎました。参加者の中に特定非営利活動法人アニマルレフージュ関西の創設者エリザベス・オリバーさんがいらっしゃたものですからご意見をいただく場面もありました。
「多頭飼育とボランティア活動」の参加者ブログ
・「パピのねこ日記」
・「ママ&ちか 猫の里親会」
・「ちかの保護猫日記」
・西原範正さんのFacebook
・海野隆さんのFacebook
※写真は、海野隆さまの了解をえて掲載しています。
来場者アンケートの結果
参加者95名中、アンケートにご協力くださったのは、82名(回収率(86.3%)。
アンケートに名前を記載してくださったのは、61名(21名が記名されていませんでした)。
【問1】本日の勉強会に参加された理由をお教えください(複数回答可)
・「多頭飼育崩壊の現場の渦中にいて困っているので」の6名を含め、参加者の3割強が多頭飼育崩壊に何らかのかかわりを持っているのがわかります。そのため、「多頭飼育崩壊を未然に防ぐ方法を考えたかったので」(53人)が参加理由のトップになったのも当然でしょう。
・2位は「西山ゆう子先生の講演を聞きたかったので」(44人)。西山ゆう子さんの豊かな見識をバックにズバリと直言される発言力に魅了されている方が多いのがわかります。
【問2】本日の勉強会全体に対するご感想をお聞かせください。
◎フリーアンサー
「テーマ自体が素晴らしい。すべての愛護団体、ボランティアが学ぶべき内容であると思います」
「今はネットなどで情報を調べることができるけれど、知らない話が聞けたのが良かった」
「西山さんの話で、日本があるべき姿に向けて、どういった目標を持つべきかを知ることができました」
「西山ゆう子さんお忌憚ない意見が聴けた。アメリカでの実例が聞けた」
「規制が整備されている例をきくと、やはり日本もそのようなレベルまで整えるべきだと感じます。足りないのは法整備と運用することだと強く感じました」
「ボランティアからの目線の話が中心だったので、多くの面からの話も聞きたい」
「実際の活動の話が聞けてよかったが、行政がまだまだなのはわかるが、少し一方的では?」
「行政が関わるべきことをはっきり言ってくださったこと。専門的(人の福祉、動物の福祉)な方の指導のもとに対応する必要を感じた」
・「大変満足」と「満足」を合わせると8割強になり、満足度が高い勉強会になりました。しかし、8名の方がノーアンサーで評価をしてくれませんでした。ボランティア活動をしている方が多いのを感じとられて、評価を避けられたのかもしれません。
【3】NPO法人ペットライフネットは、高齢者とペットがともに安心して暮らせる社会を築きたいと願っています。そのためにセミナーや勉強会を開催していますが、以下のテーマのなかで関心がある、参加してみたいと思われるものがありましたら、〇をつけてください。(複数回答可)
・トップは、「ボランティア活動と地域、自治会、行政とのネットワークについて」で55名。次いで、「ボランティア活動における運営のあり方(保護動物の譲渡金額など設定の仕方も含む)」の41名。3位は「ボランティア同士のネットワークのあり方と推進について」の40名と、ボランティア活動に携わる方が多いことを裏付ける結果になりました。なかでも、ボランティア活動における経営面でのサポートが早急の課題だと思われます。