「猫と高齢者」第2弾 結果報告

2017年7月29日大阪市立中央会館で、「~空前の猫ブームの中で、猫を飼いたい高齢者は~猫と高齢者 第2弾」を開催しました。

今回は、朝日新聞記者の太田匡彦さん、獣医師・保護動物アドバイザー西山ゆう子さんの基調講演に、パネルディスカッションでは細川敦史弁護士、「大阪ねこの会」代表荒井りかさんという超豪華メンバーをお招きしての講演です。

それだけに参加者も、土井裕美子橋本市市会議、竹下隆大阪市市会議員、社会福祉協議会1名、高齢者住宅の施設関係者、大学生、さらには広島のNPO法人SPICA、尼崎のNPO法人C.O.N、クラウドファウンディングで旅費を募って参加されたペットヘルパーつむぎさんなど多彩な顔ぶれが揃いました。総勢108名の熱い期待をえての開催となりました。

勉強会に参加くださったみなさんの感想

1.セミナーの写真を一手に引き受けてくださった海野隆さんのfacebook
2.講演者の荒井りかさんの「パピのねこ日記」
3.受付を手伝ってくださったキャットソシオンさんの啓発活動中「いっしょに暮らそう」
4.クラウドファンディングで参加してくださった武田真優子さん/ペットヘルパー&うさぎケア つむぎ
同じく武田真優子さんが西山ゆう子先生が言及された重症熱性白血球減少症(SFTS)について、詳細な報告をしてくださいました。飼い主のいない猫の救済をされている方にはぜひ、お読みください!

「もっと、保護犬、保護猫」さんからの報告と感想

7月29日(土)に開催された、NPO法人ペットライフネット主催「猫と高齢者 第2弾!」に参加してきました。
『犬を殺すのは誰か -ペット流通の闇』で著名な朝日新聞社記者太田匡彦さん、『小さな命を救いたい』の西山ゆう子さんのお二人の講演が一度に聴けるチャンス!

基調講演(1)
「猫を巡るビジネス環境および高齢者の飼育放棄問題について」
朝日新聞記者 太田匡彦さん


猫は犬の「二の舞」になる……
太田記者の著書『犬を殺すのは誰か -ペット流通の闇』の読者である私は、この言葉を聞いただけで背中に冷たいものが走るのを感じた。
猫より30年早くビジネスとして成立した犬たちに起きた悲劇を、これからも繰り返し続けるのだろうか。
生体小売業者を頂点に据えた「大量生産・大量販売・大量消費」のビジネス構造。
改正動物愛護法は、保健所に犬猫等販売業者からの引き取りを拒否することを認めたけれど、犬の大量遺棄事件や引き取り屋の存在が、問題の本質が何ひとつ改善されていないことを物語っている。

猫の主な遺伝性疾患についても言及。
スコティッシュ・フォールドの骨軟骨形成不全症は、誰もが懸念する問題である。
そもそも、遺伝性疾患の生体販売は違法なのだが。
昨今では、「サプリメントペット」と称し、高齢者にペットを買わせる口実に使用しているとか……。

◎日本の動物福祉向上のために、「殺処分ゼロ」を超える
◎ビジネス◎構造に変革をもたらせるような動物取扱業適正化を
◎地方自治体による動物取扱業者への監視指導の強化を
◎動物愛護(保護)団体への補助および自主規制を

パネルディスカッションのなかで、多頭飼育崩壊に触れたとき、太田記者が「地域の崩壊」と述べられたことに、強い印象を抱いた。

基調講演(2)
「猫を看取るのは誰か?~保護猫が問いただす❝いのち❞の課題~」
獣医師・保護動物アドバイザー 西山ゆう子さん

国が「殺処分ゼロ」を目指すという方針を打ち出したために、巷間は「殺処分ゼロ」の保護犬・保護猫ブームに沸いている。しかし、実態は保健所からボランティアの元へ、犬や猫が「移動」しているだけ。ボランティアに過剰に依存する現実が浮き彫りになっている。
決して、「譲渡」と「移動」を間違えてはならない。
「譲渡」とは、生涯飼育してくれる飼い主にもらわれることだ。
愛護団体には、さまざまな動物たちがやってくる。すべての動物たちが譲渡される可能性が100%ではないことは、私たちには周知の事実である。
愛護団体から出られない動物たちがいるにもかかわらず、「殺処分ゼロ」を声高に謳う現状に疑問を呈したい。

■今後の展望

・行政にできること
センターでの看取りや、医療ネグレクトの監視、老犬老猫ホームやホスピスの「正しい」施設の充実など

・獣医関係者にできること
一般診療と保護動物診療の分離、在宅診療「シェルター医」の普及など

・獣医師会、専門委員会にできること
安楽死、末期医療、保護動物医療の「ガイドライン」など

◎西山先生のFacebookの投稿(2016/10/12)から、一部抜粋したものをご紹介させてください。動物たちにはもちろん、ボランティアの心に寄せる西山先生の想いに、涙がとまらない。

「あずき」~愛護団体にずっといる猫

保護動物とは、飼い主がいない動物のこと。
生涯、死ぬまで責任を持って飼ってくれるという人がいない動物のこと。
だから、動物愛護団体の施設の中で、
その人がある日、現れるまで、
じっと待っている動物たちのこと。
(中略)
いつか、一生、責任を持って飼ってくれる人と、
めぐり会えるように、願いながら、
時が刻々と流れてゆく。
そして、やはりある犬は、ある猫は、その人が現れることなく、
歳をとり、老いてゆく。
ゆっくりと。ゆっくりと。
私は思う。
日本中にいる、あずきちゃんに伝えたい。日本中のあずきちゃんのお世話をする、
心優しいボランティアさんに、伝えたい。
ずっとこの子がここにいて、幸せなのかと悩む日々。この子にもっと、お金をかけてあげられたら、この子にもっと、時間をかけてあげられたらと、思う日々。折れそうになる心を、ずっとこらえて、毎日お世話をしている、心やさしいあなたへ。
(西山ゆう子先生のFacebookより一部抜粋)

パピーミルを代表とする悪徳業者や悪徳団体、無責任な飼い主、無関心な人々。
多くの要因が、罪のない多くの犬や猫たちを苦しめ、ボランティアの心を疲弊させている。
今の社会のシステムに終止符を打ちたい。そう願うのは私だけではないはずだ。
もし、私の想いが、あなたの心を、ほんの1ミリでも動かすことができたのなら、どうか手を差し伸べてはくれないだろうか。
今日も、多くの保護犬や保護猫が、自分だけの家族が現れるのを待っていて、ボランティアは命をつなぐために奔走している。

パネルディスカッションの結果報告と反省


太田匡彦さん、西山ゆう子先生の基調講演を受けて、細川敦史弁護士、「大阪ねこの会」代表 荒井りかさんの参加をえて、ペットライフネットの代表吉本由美子の司会進行のもとパネルディスカッションを開催しました。
その席上で、直近で起こった平野区および奈良五條市での多頭飼育崩壊の現場報告もお願いしました。
基調講演での問題提起、さらには今進行中の多頭飼育崩壊、1匹1万円で保護猫を引き取る団体の話など、多岐にわたった課題が一挙に噴出してしまい、討論をする暇もなく終了してしまいました。これは、司会進行の不手際と言わざるをえません。
登壇の方々、参加者のみなさまに深くお詫び申しあげます。

「猫と高齢者」第2弾 アンケート結果

参加者105名のうち、91名の方(86.7%)が来場者アンケートにご協力くださいました。しかも、びっしりと感想が書き込まれていました。ほんの少しですが、その一部をご紹介しましょう。
(1)本日のセミナーに参加された理由を教えてください(複数回答可)
「犬・猫の保護や譲渡など、ボランティア活動に自分がかかわっているので」が、「猫を飼っているので、猫のことに関心があったから」の40名をぬき、47名でトップでした。
「ペットの世話ができなくなるなど、高齢者が引き起こす問題にかかわったことがあるので」は、24名。アンケートに答えてくださったかたの4人に1人は経験があることになります。

(2)本日のセミナー全体に対するご感想をお聞かせください。
「大変満足」と「満足」を合わせると、90%。参加者のみなさんからは、合格点をいただいたといえるでしょう。具体的なご意見、ご感想をピックアップしましたので、ご一読ください。
◎「大変満足」とされた方のご意見・ご感想
・「太田記者の現実を表す数字や西山先生の獣医師としてのリアルな話をきけて、辛いこともありますが、大切な時間をすごせました。犬・猫の保護活動について、最近勉強を始めたばかりなので、これからもいろいろと勉強していきたいとあらためて思いました。」
・「ペットの小売業の禁止が難しいと太田さんよりコメントがあり、現状の貴重な情報がいただけた。ペットショップがなくなるのが理想ですが、なくならなくても解決法があるのではという具体案も聞けて良かったです。岡山で1匹25万でひきとるという団体がると相談されたことがあるので、荒井さんの最後の話も参考になりました!」
・「命のブームの中にある猫たちのこと、その社会を変えることの難しさを知りました。太田先生の多頭飼育は社会全体の問題だという言葉が印象的でした。」
・「西山ゆう子先生の講演を聴きたかったので、大阪で話が聴けて大変うれしいです。また、このような勉強会をしていただきたいと思います。」

◎「満足」とされた方のご意見・ご感想
・「いろいろと重要なテーマがありましたが、時間が足らなくて残念です。一つひとつ、もっと掘り下げて話を聞きたいです。高齢者もペットも終生暮らせるように…」
・「パネルディスカッションの時間がタイトだったので、先生方のお話をもっと掘り下げてうかがうことができればよかった。」

◎「普通」とされた方のご意見・ご感想
・「パネルディスカッションで太田さんや西山さんから報告されていた問題への取り組み等について議論が深化されるかと思っていたが、途中から多頭飼育崩壊に話が移り、ディスカッションが深くならなかったように思います。いろんな局面で問題が生じているのはわかりますが、日本の場合、安直な商品化、動物ビジネスの問題が大きいかと思います」
・「パネラーの方々、とても重要な内容を教えてくださるのですが、とどのつまり行政に関わる方々が聞いて行政に反映させなければ何にもならないと思います。あと、何が何でも生体販売をやめさせて欲しいと思います。」

◎「不満」とされた方のご意見・ご感想
・「今、高齢者がどうすればいいのかという話がとても少なかった」


(3)NPO法人ペットライフネットは、高齢者とペットがともに安心して暮らせる社会を築きたいと願っています。そのためにセミナーや勉強会を開催していますが、以下のテーマのなかで関心がある、参加してみたいと思われるものがありましたら、〇をつけてください(複数回答可)
関心のあるテーマは、「ボランティア活動と地域、自治会、行政とのネットワークについて」が圧倒的に高く、56名。次いで、「人の福祉と動物の福祉の連携について」が45名。動物問題を地域や社会の問題として共有していこうという意識が顕著に表れた結果になりました。

以上です。

みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

(文責:吉本 由美子)