今年の7月28日に中之島公会堂で実施したセミナー、「多頭飼育とボランティア活動」の基調講演をしてくださった獣医師の西山ゆう子先生が『いい獣医さんに出会いたい!』を上梓されました。
A12版で109頁という小さな冊子ですが、その中身は西山先生の想いがぎっしりつまった充実したものになっています。
ご存知のように西山先生は、獣医師として30年。日本とアメリカで数多くの動物、そしてその飼い主と付き合ってこられた方です。その貴重な経験をもとに今現在、動物を飼っている日本人に「これだけは言っておきたい」というアドバイスが披露されています。
なかでも、飼い主と獣医師とのコミュニケーションのとり方が日米の比較を随所に交えながら描かれているのが、西山先生ならではの経験が裏付けられていて出色です。
ことに日本人飼い主のあいまさ、いろいろと気を遣うあまり、獣医師に率直にものがいえない体質が正しい診療を損なっていると指摘されています。
そのひとつが、診療費。日本人はおカネのことを聞くことをためらう傾向にあります。それが過剰診療になり後からトラブルに発展することも…。アメリカでは事前にはっきり聞くのが普通であり、獣医師も飼い主の意向と予算にあった治療方法を提示できます。
また、5種から7種の混合ワクチンを勧められた際にも、なぜ7種にする必要があるかを獣医師に尋ねることが大切。これからは、ワクチンをカスタマイズする時代だと喝破されます。
2010年以降、インターネットの普及に伴って「Dr.Google」が登場。Dr.Googleの民間療法をうのみにする飼い主が増え、獣医師は「Dr.Googleの後始末」をする羽目に陥るケースが多くなったといいます。
しかし、「どんなときでも、私はDr.Googleには負けない自信がある」と西山先生。「しっかりとこの目で見て、動物に触り、聴き、嗅ぎ、そして飼い主さんと実際に話し合って、意見交換をするのだから。そして選んだ検査方法、診断、治療方法は、Dr.Googleのマニュアル化した指示よりずっと優れているはずだ。私がこの一匹の動物のために特別につくった、世界で一つだけカスタマイズした治療計画なのだから。」
Dr.Googleではなく、西山先生をはじめ動物たちの臨床医として最前線にたつ「いい獣医」に出会うためには、「はじめに」に書かれていた言葉、「いい獣医師は、そこに初めからいるわけではない。いい獣医師は、あなたがつくるものだ」というメッセージがビンビン響いてきます。
(吉本 由美子)