スタッフブログ

ペットと暮らせる!                  住宅型有料老人ホーム「れんげハイツ井高野」

私自身がひとり暮らしの高齢者ですから、「ペット共生可能」と謳われた老人ホームには人一倍関心があります。しかし、なかなか「これは!」と思える物件に出会えないのが現実です。
そんななか、医療法人蓮華友愛会の相談員の方が突然、ペットライフネットの事務局に尋ねてこられました。ペットライフネットが高齢者のペット飼育を支援しているのをホームページでご覧になり、このたびペットと暮らせる在宅型有料老人ホームを開設したので、一度、ご案内させていただきたいとのこと。願ったり、叶ったりで、さっそく「れんげハイツ井高野」にお邪魔しました。

地下鉄今里筋線「井高野駅」で下車、のどかな田園風景を眺めながら15分くらい歩くとゴルフセンターにでます。その裏手に「れんげハイツ井高野」がありました。
昨年12月1日に開設されたばかりですが、すでに9割近くが入室されているとのこと。ただ、ペット可の居室はまだお一人しか入居されていません。ペット共生可物件がほとんどみあたらないのが現状ですから、入居希望者自体が最初から探すのを諦めているからでしょう。目下、ケア・マネージャーさんに「れんげハイツ井高野」を説明される際、ペットと暮らせることをアピールされているそうです。

ペットと同居できる専用ベッドルームには、防音が施され、ニオイ対策もされています。また、ペット連れで来客とくつろげるペットルームが設けられ、シャンプー&トリミングができる専用洗面カウンターも用意されています。ペット同居エリアから戸外にでると、ドッグランが楽しめるスペースが確保されています。小型犬や猫と暮らすのには十分な配慮がされているといえるでしょう。

さっそく入居して半月のMさんのお部屋にお邪魔しました。Mさんはベッドのそばの椅子に腰をかけ、テレビを観ておられました。Mさんに新しい住まいへの感想をお聞きしますと、「ここはほんまに静かや。よう寝れる」と満足げ。この間、外来者の登場に驚いたチンが、Mさんの椅子の周りをぐるぐるとまわりながらこちらを観察した後、Mさんのひざの上に腕をかけ、小首を傾げながらじっとこちらをみつめます。Mさんに頼り切った、そのいじらしい仕草は、今の暮らしに安堵している様子が伺えます。
Mさんのチンは、「チーちゃん」2歳。70代後半のMさんにとって6代目にあたるとか。チーちゃんについてお伺いすると、「チンがいない生活なんて考えられへんからな」。終生飼育といったことを考えるよりも何よりも、チンとの暮らしがMさんにとってはあまりにも当たり前のことなのでしょう。

ところでMさんがこちらに入居されて間もなく、チーちゃん行方不明騒動があったとか。通常はペット同居エリア以外にはチーちゃんを出さないようにされていたそうです。ところが、たまたま夜間にドッグランコーナーに出してしまったのが原因で、スタッフ総出で探し回られたそうです。
れんげハイツ井高野では、他の同居者とのあいだでトラブルなどが持ち上がらないよう、「ペット飼育規定」が設けられています。しかし、施設長の曽谷志郎さんは、これはあくまでも試金石といるもの。ペット一緒に暮らす共同生活のなかで起こった課題をひとつずつ解決しながら、れんげハイツ井高野ならではの「ペット飼育規定」にブラッシュアップしていきたい。
また、ペットの介護が必要になってきたら、同じ医療法人蓮華友愛会のJAHC「マムメイド」で介護サービスを開発してもらうようにしたい。入居者とそのペット、そのどちらもが最期まで生きがいをもって暮らせる施設を創るのが自分たちの役割だと語っておられました。

2025年、高齢者のひとり暮らし世帯が37%に達するといわれています。年をとり、ひとり暮らしになると犬や猫とともに暮らしたいと願う高齢者は、今以上に増えてくるに違いありません。「高齢者住宅におけるペットとの共生」を受け入れる社会になって欲しいものと切に願います。

(吉本 由美子)
 

住宅型老人ホーム
「れんげハイツ井高野」概要

名 称:住宅型有料老人ホーム
    れんげハイツ井高野
所在地:大阪市東淀川区井高野
    4丁目7-14
電話番号:06-6827-1277

■施設
構造:木造(一部鉄骨造り)
階数:2階建て
戸数:78
居住部分の規模:13~13.52㎡
共同利用施設:食堂、浴室、談話室、
       ペットルームなど
加齢対応構造:エレベーター、緊急通報装置

■入居費用
<ペットと同居される方>
敷金・一時金:300,000円
月額:128,000円(内訳:家賃53,000円/管理費30,000円/食費45,000円)
<一般の方>
敷金・一時金:0円
月額:118,000円(内訳:家賃48,000円/管理費25,000円/食費45000円)

「いい獣医さんに出会いたい!」 西山ゆう子著

今年の7月28日に中之島公会堂で実施したセミナー、「多頭飼育とボランティア活動」の基調講演をしてくださった獣医師の西山ゆう子先生が『いい獣医さんに出会いたい!』を上梓されました。
A12版で109頁という小さな冊子ですが、その中身は西山先生の想いがぎっしりつまった充実したものになっています。
%e8%a5%bf%e5%b1%b1%e5%85%88%e7%94%9f%e3%81%ae%e6%9c%acご存知のように西山先生は、獣医師として30年。日本とアメリカで数多くの動物、そしてその飼い主と付き合ってこられた方です。その貴重な経験をもとに今現在、動物を飼っている日本人に「これだけは言っておきたい」というアドバイスが披露されています。
なかでも、飼い主と獣医師とのコミュニケーションのとり方が日米の比較を随所に交えながら描かれているのが、西山先生ならではの経験が裏付けられていて出色です。
ことに日本人飼い主のあいまさ、いろいろと気を遣うあまり、獣医師に率直にものがいえない体質が正しい診療を損なっていると指摘されています。
そのひとつが、診療費。日本人はおカネのことを聞くことをためらう傾向にあります。それが過剰診療になり後からトラブルに発展することも…。アメリカでは事前にはっきり聞くのが普通であり、獣医師も飼い主の意向と予算にあった治療方法を提示できます。
また、5種から7種の混合ワクチンを勧められた際にも、なぜ7種にする必要があるかを獣医師に尋ねることが大切。これからは、ワクチンをカスタマイズする時代だと喝破されます。

%e8%a5%bf%e5%b1%b1%e5%85%88%e7%94%9f2010年以降、インターネットの普及に伴って「Dr.Google」が登場。Dr.Googleの民間療法をうのみにする飼い主が増え、獣医師は「Dr.Googleの後始末」をする羽目に陥るケースが多くなったといいます。
しかし、「どんなときでも、私はDr.Googleには負けない自信がある」と西山先生。「しっかりとこの目で見て、動物に触り、聴き、嗅ぎ、そして飼い主さんと実際に話し合って、意見交換をするのだから。そして選んだ検査方法、診断、治療方法は、Dr.Googleのマニュアル化した指示よりずっと優れているはずだ。私がこの一匹の動物のために特別につくった、世界で一つだけカスタマイズした治療計画なのだから。」

Dr.Googleではなく、西山先生をはじめ動物たちの臨床医として最前線にたつ「いい獣医」に出会うためには、「はじめに」に書かれていた言葉、「いい獣医師は、そこに初めからいるわけではない。いい獣医師は、あなたがつくるものだ」というメッセージがビンビン響いてきます。

(吉本 由美子)

柳美里「ねこのおうち」に描かれたペットと暮らせる老人ホーム

shinyabin_160831-03たまたま、うつらうつらしながらラジオ深夜便「ふくしまにまなぶ ふくしまでまなぶ」を聞いていたら、柳美里が2年前から南相馬に転居して暮らしているという。将来の夢は、南相馬の駅前に誰でも気軽に立ち寄れる交流の場となる図書館を創りたい。そこに自分の著書「ねこのおうち」なども置いて、自由に読んでもらいたいというような話を語っていた。柳美里が震災後から南相馬に通っていたことも、猫に関心があることも全く知らなかったものだから、あまりにも意外でさっそく「ねこのおうち」を買い求めた。

柳美里という芥川賞の作家の作品は読んでいて息苦しかった印象が強く、強いて読みたいと思わなかった。今回も覚悟をして読み始めたのだが、「ニーコのおうち」「スワンのおうち」という章立てをみてもわかるように物語として描かれていて読みやすい。舞台は、光町の「ひかり公園」。ここに集う猫と人の生と死の物語が描かれている。
nekono隣町のマンションで、キャットショーに出すほど綺麗なチンチラがマンションから脱出して外猫の仔を3匹生む。妻は雌親に似ていない短毛キジ虎の仔を毛嫌いし、ひかり公園に捨てるように夫に命じる。夫は、そんな妻との離婚を決意しながらも、仔猫をひかり公園に捨てる。ここから、短毛キジ虎ニーコを助ける一人暮らしの渡辺さん、ひかり公園でTNRをする猫好きの田中さん、公園での餌やりに反対し捕獲器に毒の餌を仕掛ける加藤さん、捨てられた3匹の仔猫に対する小学生の残酷な仕打ち、そのなかから1匹を救い出して持ち帰ると姉で不登校だった中学生が猫の世話を始める話、捨て猫の里親募集もするカモメ動物病院の港先生、港先生から猫を譲渡してもらうシングルマザーと二人暮らしの原田クン、猫を飼いはじめて両親が離婚したトラウマから逃れる端緒をつかむフリーライターのひかる、保健所の「子ねこふれあい広場」で2匹の猫を引き取る若い夫婦、その妻の死、そして最後に猫や犬と共に暮らせる老人ホームに入所していた認知症の渡辺さんが「自分の人生から時間が漏れ出していく」老後をニーコの子ども猫と出会って自分を取り戻す。猫と人がお互いが求めあうようにして関わり、輪廻し、転生する。

物語の最後に登場する特別養護老人ホーム「フレンドハウス」は、「殺処分を減らす取り組みをとして、ねこといぬの保護活動をしています。元々は、ペットと共にセカンドライフを送ることが触れ込みだったんですが、飼い主がペットよりも先にお亡くなりになられるケースも多いんです。遺されたペットを他のお年寄りがかわいがり、生きて行く支えにしている姿を見て、施設長から、老人ホームと老犬ホーム、老猫ホームを両立できるじゃないかという提案がありました。われわれスタッフも全員一致で賛成」し、大改装がなされて、「いぬ好きの老人が暮らすユニット、ねこ好きの老人が暮らすユニット、動物嫌いやアレルギーがある老人が暮らすユニットに住み分けられていて、各ユニットに一つずつ、食事や体操などができるホール」を設置。「ドッグトレーナーやトリマーなどの動物担当スタッフも常駐していることで、人間担当はピンク色、動物担当はブルーの制服を身に付けていました」。
この「フレンドハウス」の描写は、日本で唯一、ペットと一緒に入居できる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」を彷彿とさせると同時に、それをさらに進化させている。“小説に描かれた夢物語”にしないで、超高齢化社会に不可欠な施設として何としてでも挑戦してほしい。それこそ「みんなのおうち」が実現する。

(吉本 由美子)