※写真は「Dogs Life」より
オーストラリアに住む出口順子さんから『高齢者とペット』について、貴重な情報をいただきました。翻訳は佐藤由希子さんにお願いしました。
(1) ペットを飼う高齢者へ手厚い支援
オーストラリアは全世帯の60%以上がペットと一緒に暮らしているといわれるくらいのペット大国です。それを支えているのが、RSPCAやAWLといった大きな動物愛護団体です。なかでもペットを飼う高齢者には手厚い支援が施されています。
※RSPCANSW (動物虐待防止協会)ニューサウスウエェールズ州のホームページより
■オーストラリアのペットと高齢者
社会的に孤立しがちな高齢者にとってペットはとても重要な存在です。私共の高齢者のペット(POOPs)プログラムは、いざという時にペットのお世話をして高齢者を助けています。私共の目的は高齢の飼い主さんとペットが可能な限り長く健康で幸せに、自分の家で一緒に暮らしていただくことです。
私共は65歳以上の飼い主さんが病気の治療で入院などをする場合、ペットの一時預かりや緊急受け入れ先を提供して支援しています。また、ペットの医療面での支援も可能で、トリミング等基本的なケアのために家庭訪問を行うこともできます。これらのサービスは、社会的に孤立した緩和ケアを受けているどの年齢層の方にもご利用いただけます。
他の全てのRSPCAの事業と同様、高齢者のペットプログラムは、政府からの公的資金援助は一切受けておりません。故に、あなたの飼い主さんとそのペットを支援したいという寛大なお志に頼っています。
(2) 高齢者ペットケア助成プログラム
オーストラリアでは高齢者とペットが一緒に暮らしていけるよう、ペットケア助成金が用意されています。
※情報サイト:「ドッグライフ」(Dogs Life) 2014年7月4日の記事から
■高齢の飼い主はペットに助けられている
高齢の飼い主がペットのケアに必要な経済的な補助を受けられるように、アニマルウェルフェアリーグ オーストラリア(AWLA :the Animal Welfare League Australia)は、高齢者のペットのケア助成プログラム(the Pets in Aged Care Grants progra)を始めることにしました。
プログラムは助成金予算1万ドルを高齢者のペットのケアに充てる予定で、更に最大1千ドルの小規模の助成金をリフォームなど高齢者とペットの生活環境を整えることに割り当て、高齢者とペットが一緒に暮らしていけるように働きかけます。
現在のところ、ほとんどの高齢者施設やグループホームはペット可ではありません。そのために、施設に入る高齢の飼い主さんは悲嘆にくれるケースがほとんどです。ペットと離れ離れにされたことを受け入れられず、睡眠や食欲に悪い影響が出て、高齢者の心身に問題を起こすこともある、とAWLAは指摘します。
高齢者のペットケア助成プログラムは、高齢者のペット問題を実際に解決するように、ペットの医療費やトリミング代、散歩の手間賃、餌代やペットと暮らせるようリフォームする費用などをカバーします。助成金でペットの日常のお世話をする人の訪問を手配することもできます。
AWLAの執行役員アン・ボックソールは、「時に高齢者の飼っているペットのお世話は難しいものがありますが、何事も乗り越えられないことはありません。努力した分、問題は解決しますし、住民の高齢者の方の生活環境と健康は著しく改善されるのですから」と述べています。
(3) 一時預かりは高齢者に最適
アメリカのシニアライフニュースペーパーというサイトからの情報です。
保護されたペットの里親を探しあてるまでの一時預かり(フォスターペットペアレント)に高齢者が適していることが紹介されています。一時預かりをする方には飼養費が支払われます。オーストラリアでも医療費などの補助があります。
※情報サイト:シニアライフニュースペーパー(Senior Life Newspaper)より
■ペットと高齢者はよきパートナー
ペットは人間にとって素晴らしいパートナーです。ペットは限りない愛情を与えてくれ、ペロペロと温かいキスをくれ、明らかに私達を健康にしてくれます。高齢者にとって、ペットは側にいてくれる伴侶であり、ペットがいると寿命は伸びるし、数え切れないほど健康に効果があります。
ペットは様々な形で高齢者に有益です。まず、心身共に健康であることに貢献します。AWL(Animal Walfare Leagu)の理事ダーラ・マッカモンさんはこう言っています。
「最新の研究では、ペットを飼うと血圧が下がり、ペットを飼っている人の方が長生きして、病気にも掛かりにくいそうです。ペットの飼育は健康に良いのです。ペットは孤独な高齢者にとって良き伴侶にもなります。配偶者の死等の状況では、ペットを迎えることがよくあります。ペットと高齢者はお互いに助かります。ペットが心の空虚さを埋めてくれるのです。高齢者は通常ペットとより長い時間一緒に過ごすことができますし、高齢者はペットが側にいることで本当に喜び感謝します。AWLは犬猫の譲渡活動をしています。AWLの譲渡プログラムは、他の多くの団体のやり方とは少し変わっていて、多面方式なんです」
と、マッカモンさんは言います。
「私達はよく小さい乳呑み児の子犬や子猫を引き取りますが、シェルターで世話をするより、平和で静かな一般家庭で一対一でお世話する場合の方が生き生きします。私達は、保護犬、保護猫がくると、一時預かりが依頼できる家庭のリストをみて電話をかけ、ペットが譲渡できる年齢になるまで預かってもらっています」
「一時預かりしてくださる方の半数は高齢者です。一時預かり家庭の役割は、動物が譲渡できる状態になるように助けることで、特に病気やケガの子のお世話をお願いしています。シェルターが閉じる週末だけの預かりもお願いしています。完全に譲渡してしまうのではなくても、このようにした方が家族や先住動物達とうまくやっていけるかどうか見ることができます。このやり方はとても成功していて、譲渡されても返還されることが減って、譲渡成功率が上がっています。もっと多くの譲渡ができると確信しています。
動物を譲り受けることはそんなに費用がかかるものではありませんが、時間は掛かります。AWLは医療的ケアと、必要があれば餌を提供します。とはいえ、ほとんどの飼い主さんはペットの餌は自分で持ってくださっています」
一時預かりをしている方が預かっているペットを手放さずに飼ってしまわれるケースもよくあります。
AWLで働くジム・ヘンダーソンさんの場合もそうです。ペット3匹を預かっていて、結局そのペットの本当の飼い主になりました。
ジムは笑いながら、「家に連れ帰ったら戻せないよ。一度、家に入れたら可愛くて戻すのは難しいよ」と言います。
譲渡ペットを預かったカール・アボットさんも、ヘンダーソンさんと同じです。アボットさんは「家で預かると、ペットを身近な存在に感じるし世話する方法もわかってきます。リラックスできるしね」と言いながらペットに寄り添いました。アボットさんは2年前からペットの一時預かりをしていて、現在はジョジョという名前の犬を一匹預かっているそうです。
WELは高齢者でペットを譲渡でもらってくださる方と6歳以上のペットを飼ってくれる方には、費用を軽減しています。譲渡で貰い受ける場合、犬は95ドル、猫は50ドルです。
以上、オーストラリアの情報をメインに高齢者とペットの関係をみてきました。次は、『ペット遺産』についてお知らせします。
吉本 由美子