エートス法律事務所の所長、弁護士吉井昭先生が平成26年11月7日に病気のため永眠されました。
ペットライフネットが特定非営利活動法人として発足するきっかけをつくてくださったのは、他でもありません。吉井昭先生です。
吉井先生と吉本は、いきつけのお店の顔見知りの間柄でした。平成25年の早春、たまたまいつものお店でお会いした時、かねてから気にかかっていたペットに資産を遺せる方法についてご相談しました。すると、吉井先生は「わかった。いい人がいる」といってすぐに紹介してくださったのが、弁護士檜山洋子さんです。
檜山洋子さんと知り合って、「信託」という方法を教えていただきました。そしてペットライフネットの方向性が決まり、現在に至っています。
吉井先生、ほんとうにありがとうございました。
(吉本 由美子)
※ここでは、エートス法律事務所・弁護士法人エートスが発刊する「エートスだより」(2015年春号)より、弁護士・檜山洋子さんの追悼文を転載させていただきます。
吉井先生、ありがとうございました。
弁護士 檜山洋子
吉井先生と知り合ったのは,私が弁護士登録1年目の平成12年12月14日でした。子どもの権利条約の勉強会の後,子どもの権利委員会のメンバーで行った西天満のとある割烹料理店のカウンターで,たまたま隣り合わせになりました。吉井先生は,口髭を生やした恰幅の良い紳士でした。私が悩んでいた小さな事にも耳を傾けてくださり,今度事務所に遊びにおいで,と誘ってくださいました。そして,当時別の事務所に所属していた私の小遣い稼ぎのために,一緒に事件を担当させてもらうようになり,吉井先生の仕事ぶりを垣間見ることができました。依頼者も相手方もみんな,吉井先生と話をした後は,和やかな顔つきになって帰っていかれるのが大変衝撃的でした。
その後,何度か食事にも誘ってもらいました。当時,弁護士として生きていくことに大きな不安と恐怖をいだいていた私に,吉井先生は,「君はね,お父さんとお母さんの良いところをぎゅっと凝縮して生まれてきたんだよ。そして,お父さんとお母さんも,そのまたお父さんとお母さんの良いところを凝縮して生まれてきはった。そのまたお父さんとお母さんも同じ。だから,君は,ご先祖様の良いところがぎゅっと詰まったすばらしい存在なんだよ。」と話してくださいました。感動で涙が出ました。
その後,吉井昭法律事務所に移籍したいとお願いしました。吉井先生は,にこにこ顔で「参ったな~」と頭を撫でながら,すぐに,事務所に私の机を準備してくださいました。
たくさんの大事件に一緒に取り組んで,実地で弁護士の仕事を教えてくださいました。大規模仮処分の執行案件では,朝早くから夜遅くまで冬の京都嵐山に籠もり,夜の砂利道に足を取られた吉井先生がこけて私が巻き込まれるという思い出深い出来事もありました。
打合せ室にパソコンを置きたい,依頼者用の画面も設置したい,依頼者に説明しやすい場所に事務所を移転したい,1階のスペースを借りたい(現エートスステーション)など,私のわがままとも言えるような提案を次々と受け容れてくださいました。そのほかにも,細かい提案をほとんど全て,却下することなく実現してくださいました。
エートス法律事務所になった後,中小企業の経営の勉強をしていた私に,吉井先生は,経営の勉強をしたいなら神戸大学のMBAコースに通ってはどうかとアドバイスをしてくださいました。言われるとおり,神戸大学大学院MBAコースに通ってCSRに出会い見識を深めることができました。MBAコースが終わりそうなころ,吉井先生から「今度は留学やな」と言われ,急遽英語の勉強を開始しニューヨークに留学することになりました。留学先では環境法で修士号を取得し,帰国後,ニューヨーク州の弁護士の資格を取得させてもらいました。この間,ほとんど事務所のために仕事をすることができなかった私を,吉井先生は物心共に全面的にサポートしてくださいました。そればかりか,私が何かを達成するたびに自分のことのように喜んでくださり,ニューヨーク州の司法試験に合格したときには祝賀会まで開いてくださいました。
何度も何度も叱られて,何度も何度も泣きました。何度も何度も褒められて,何度も何度も喜びました。一緒に証人尋問に行くときは,「必ず一回は傍聴席と裁判官の笑いを取ろう」と約束しました。笑いを取れた事件は,ほぼ勝訴でした。
傲慢になるな,細やかな配慮を怠るな,安住するな,世界に打って出ろ,人生60歳まで雑巾がけ,威張るのはまだ早い。出会ってから約14年,ずっと言われ続けてきました。そして,病に倒れられた後,「とても良い人生でした。悔いはありません。エートスを立派な事務所にしてください。世界平和を追求しなさい。世界のトップレディになりなさい。君ならできる。女性であることが強みになるから。」と言い遺されました。
世界中で最も尊敬する吉井先生,私が今ここにこうしていられるのは,先生のおかげです。先生の教えを守って,これからもたゆまぬ努力を続けます。本当にありがとうございました。