2018年11月23日(金・祝)にドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)5階特別会議室で、「犬や猫の保護活動における獣医師たちの新たな挑戦!」を開催しました。収容人数108名の会場に95名の方が参加。会場は満席です。しかも、東京、愛知、広島、愛媛と、遠方からの参加者も多く、職業や所属についても保護動物のボランティア(個人)を筆頭に獣医師、動物愛護・福祉のNPO団体の方、動物看護士さらにはケアマネージャー、行政書士、大学教授と多士済々。参加されたみなさんが「獣医師の挑戦」に大いなる関心と期待を抱いておられるのがわかります。
午後2時開演。最初の講演は、米国獣医師・西山ゆう子さんの「私が、動物病院へやってくる、ペットと飼い主のために働くことを辞め、捨てられた犬猫の獣医師になろうと決心した理由」。どのような内容になるのかと固唾をのんで待っていると、「動物のお医者さん」という漫画からスライドが始まりました。これで会場は一度に和やかな雰囲気に包まれたのですが、「私が動物のお医者さんになろうと決めた理由」の段になるとすすり泣きがちらほら。そして、「私がアメリカに行くと決めた理由」になるとシ~ンと緊張した空気が流れました。ハンカチをもつ方が目立ち始めます。
次の講演は、西山獣医師より20歳も若い獣医師・橋本恵莉子さん。今年7月に八尾市に猫の避妊去勢手術専門クリニック「Happy Tabby Clinic」(略して「ハピタビ」)を開業されました。
ハピタビの活動目的は、
(1)猫の避妊去勢手術の実施は、自宅ガレージを改装して手術室に。
(2)保護猫を里親につなげる活動は、定期的に譲渡会を開催。
(3)啓発活動とコミュニティの構築は、居間を開放して保護猫がくつろいでいるなかで、さまざまな猫問題を語り合うコミュニティルーム「Happy Tabby Room」になっています。
今までにない保護猫活動の新たなステージが切り拓かれたという実感がわきました。
最後の西山獣医師と橋本獣医師との対談では参加者から寄せられた相談をもとに、
テーマ①動物愛護・福祉を仕事にして、ちゃんと生活ができるのかどうか?
テーマ②保護活動で燃え尽きてしまわないためにはどうする?
テーマ③20年後、日本の動物愛護に必要な人材とは?
テーマ④急増する高齢者問題。動物×ヒトの福祉は?
以上の4つのテーマで話し合っていただきました。
荒井りかさんがブログ「パピのねこ日記」で報告してくださいました
西山ゆうこ先生のお話から。
ご自身がネタを提供したという「動物のお医者さん」(漫画)の笑いを誘った冒頭から一転・・・
西山先生が獣医を志すきっかけとなった幼い頃の愛犬「ゴロちゃん」の悲しいお話。
まだ女性獣医が少なかった頃のパワハラ・セクハラ・・壮絶な苦難を乗り越えて今に至るお話。
泣きました・・(会場の皆さんからもすすり泣きが)
ワタシは同じような世代、田舎育ちですので犬のことも女性差別のことも自分の体験といろいろ重なりました。
今、思えばいろいろと理不尽な時代でした。
それでも、
西山先生のように強く生き、何もかも乗り越えて、夢をかなえている姿に励まされました!
西山先生が、個人的なお話をされるのは今回初めてだそうで、今回の参加者は貴重なお話が聞けたことになります。
そして橋本恵莉子先生のお話。
橋本先生は、西山先生よりずいぶん若く、まさに「動物のお医者さん」を読んで獣医を志した次世代。
軽やかに大学時代を駆け抜け、全くフツーの獣医さんになっていたのに
ボランティアさんたちからTNRの手術を頼まれたことがきっかけで
TNR専門病院「Happy Tabby Clinic」を開くようになるまでのお話。
そして、これから一般的な人に、どうやったら保護猫との接点を気軽に持ってもらえるか。
その試みとして病院に併設している「Happy Tabby Room」のお話。
西山先生から橋本先生へとつながる道が見えた感じです!
未来は次世代へと確実にひきつがれ、
確実により良いものになっていくという予感がしました!
会場はびっしり満員でした!!
休憩のあと、2人の先生たちへの質問と対談です。
テーマが4つありました。
1.動物愛護・福祉を仕事にして生活が成り立つか?
ボランティアさんたちに寄り添いたくても、獣医が生活できないような状況では難しいという意味ですが、お二人とも実際に収入を得て生活が成り立っておられるということで、
さらに次世代の獣医さん!安心してください!
2.保護活動で燃え尽きないためにはどうする?
「無理をしない」「できることをする」
「1匹しか救えなかったではなく1匹救えたと思う」などなど。
励ましのお言葉をいただきました!
3.20年後、日本の動物愛護に必要な人材とは?
20年後は想像しにくいということでしたが・・
西山先生は「動物看護士がもっと活躍することを期待している」ということでした。
4.急増する高齢者問題、動物×ヒトの福祉は?
西山先生のお話では
「アメリカは普通の人が普通に保護猫・保護犬を飼ったり親類などの犬猫のセカンド・オーナーになったりしている。
日本では、親戚がいても誰も犬猫を引き取らないのが現状。このあたりの意識がもう少し変わっていくべき」ということでした。
確かにそうです。
子犬・子猫から飼いたい人が多い日本。(特に高齢者がそうですね)
大人猫や大人犬の良さをわかってもらいたいです。
橋本先生のお話では、
「まさにHappy Tabby Roomでやっていこうと思っていることです。
地域コミュニティの場となって大人猫の良さや猫を飼うとはどういうことかを学んでもらったり相談にのったりオーナーさんたちが話し合える場所でありたいと思います。」
獣医さんがコミュニティを意識して作っていく・・新しいですね!!
今後が楽しみです!
参加してくださった方の感想
1.セミナーの写真を一手に引き受けてくださった海野隆さんのfacebookのアルバム
2.今回、講演してくださった橋本恵莉子さんの「happy-tabby-clinicのブログ」
※後日談も書きこまれています。ぜひ、ご一読を!
3.フラメンコをこよなく愛し、ボーダーコリーのレスキューにも励むRosaさんの「bar milのブログ」
アンケート結果
今回は、95名参加で85名の方が回答してくださいました。実に89.4%の回答率です。家にまでアンケートを持ち帰り、わざわざファックスで送ってくださった方もいました。このことひとつをとってみても、参加者のみなさんの熱意が伝わってきます。
(1)本日のセミナーに参加された理由をお教えください(複数回答可)
参加理由は、「西山ゆう子先生の講演を聴きたかったので」がダントツの63名(74.1%)でした。
次に多かったのは「犬や猫の保護や譲渡など、ボランティア活動に自分がかかわっているから」「犬や猫の保護活動に興味があるから」の2項で、45名(52.9%)。半数以上の方です。
「橋本恵莉子先生の講演を聴きたかったので」は、33名(38.8%)。
「今現在、獣医師、動物看護、動物介護といった動物にかかわる仕事をしているから」という方も17名(20.0%)参加してくださいました。
(2)本日のセミナー全体に対する感想をお聞かせください。
「大変満足」と「満足」を合わせると、実に91%! アンケートを書く時間もそれほどないなかで、みなさん、熱心にコメントを寄せてくださっています。
圧倒的に多かったのは、「保護活動に寄与する獣医師さんのさまざまな活動形態を具体的に知ることができたと思います。また、活動の新しい形が広がっていく希望があり、うれしくなりました。どんどん頑張って進めてほしいです」。あるいは「個人として何をしていけばよいか、何ができるか…より考えるきっかけと想いを貫く強みをいただけました。ありがとうございました!」。
また、「今後のキャリア形成のヒントになった」という声にもみられるように、保護動物にかかわることへの勇気と希望をあらためて実感してくださったことがよくわかります。
西山ゆう子さんの講演を目当てに参加された方からは、「西山先生のお話が最初から最後まで泣かされぱなしで、衝撃的でした」という声が多く寄せられました。
さらに、「西山先生のルーツを詳しくきくことができ、現在発信されていることについて理解が深まりました」。
「私も昭和の時代に飼い犬を処分されたり、自分の無知から猫に可哀そうなことをした経験があります。それが人格形成に大きく影響しているというか、動物との共生を望むバックグランドになっています。何か動物のためにしたいという方にはそういうケースも多いのかなと思いました。現実的には小さなことしかできませんが、あの子たちのために何か動きたいという気持ちになりました」。
大学教授の方から「西山先生のお話をぜひ、大学生に聴かせてあげたいと思いました。今の学生たちは自分の将来について確固たる希望も計画もなく、進学してくる学生が多い。人生にやり直しは可能だということを知って欲しいのです」というコメントもいただきました。
なかには、「パイオニア的西山先生と独立されこれからの活躍が期待される橋本先生とのマッチングが良かったです」とセミナーの企画にもお褒めのメッセージをいただきました。主催者として、やりがいがあり、ほんとうにうれしいです。
(3)NPO法人ペットライフネットは、高齢者とペットがともに安心して暮らせる社会を築きたいと願っています。そのためにセミナーや勉強会を開催していますが、以下のテーマのなかで関心がある、参加してみたいと思われるものがありましたら、〇をつけてください。(複数回答可)
最も多かったのは「ボランティア活動と地域、自治会、行政とのネットワークについて」で、54票。そのなかに、「ペット業界の方も加われると、より良いものができるチームになると思います。したいですね」というご意見もありました。保護動物活動をしていると、ペット業界と一線を置きがちですが、生体販売をしないペットショップも増えてきています。将来を見据えた時、視野に入れておく課題ですね。
次に多かったのは、「人の福祉と動物の福祉の連携について」の40票。対談でも話し合っていただきましたが、保護葬物を介してのコミュニティづくりにもっともっと真剣に取り組んでいきたいものです。
(文責:吉本)